ダウト(笑)

えー、懲りもせずに皇位継承話。「紀子さま男児出産説」ネタのエントリをめぐっていて、以下のエントリのタイトルに脊髄反射

法は何のためにあるのか,何処から生じたのかをよく考えれば,上記のような枝葉末節に拘ることが事の本質をはぐらかすための手段であることが分かる.一国の憲法はその国の古来から育まれてきた伝統や不文の規範から生じたものだ.そして日本の場合,その伝統や文化,規範が皇統とは切っても切れない関係にあることは誰も否定しないであろう.ゆえに法理論から云っても,天皇の伝統的正統性は法的正統性に勝るものと考えても良い.


まず、「一国の憲法はその国の古来から育まれてきた伝統や不文の規範から生じたものだ」説。ダウト。
憲法というのは世界史をちゃんと勉強していれば判るはずなのだが、そもそも「被支配者が支配者を縛る為の契約」だ。もちろん伝統や不文の規範も影響を与えはするが、別に依拠する訳ではない。
ただ、日本国憲法はそこら辺がちょっと曖昧にしてあって、それを如実に表わしているのが比較憲法をやった人間なら多分誰でも知ってる「法の下に平等」というフレーズ。フツーは「法の上」や「法の前」なんだけどね。お上から権利を頂いているという図式になっている。
だから上記引用の様な解釈も無い訳ではないのだが・・・こと日本国憲法について言えば、それは無い。なんせ骨子を作った人達の意図が「アメリカ合衆国でさえやらないほど徹底した民主的憲法」なんだから。結局骨抜きにはなったけど、一応全体の構成としてはそれが残ってる。逆にそれが呪縛となって「考えない左翼」が一所懸命に「ゴケンゴケン」と騒ぐ訳だ。実際問題、日本国憲法はそれほど民主的でも平和でもないし、共産党憲法改正に反対してるのは「自分達の意見が反映されそうも無い」からだし。


次に「ゆえに法理論から云っても,天皇の伝統的正統性は法的正統性に勝るものと考えても良い」説。ダウト。
わが国は一応法治国家なので、天皇の伝統的正当性は法的正当性に依拠しないと第三者対抗能力が無い。法律が無い部分については「伝統・慣習」がモノを言うのだが、それは法律に反してはいけない。
以前のエントリで書いたかもしれないけど、例えば旧皇族の某さんが色々運動して皇族の婿に納まったとする。しかしその子は現行法上の皇位継承権が無い。なので仮にその子を「正当な皇嗣」として担いだとしても法改正をしなければ憲法で言うところの「天皇」としての法律行為を行うことができない。それが「法の支配」というやつだ。


で、天皇制を維持しようと思ったらどちらにせよ皇室典範を改正せにゃならないのだけど、憲法に反する立法行為は法律上できない。じゃぁ何故現在の皇室典範憲法に反していてもOKなのかと言うと・・・条文を最後まで読めば判る。かなりインチキなんだけど、皇室典範日本国憲法の下で作られた法律ではないのだ(笑)。
だから6条は違憲立法にならない様に改正しなきゃならないワケだが、「男系維持」系の案はどれもどこかで憲法に抵触しちゃうので国会を通す事ができない。
つまり「憲法改正をしないで国会を通せる」皇室典範改正をやろうとした場合のギリギリ妥協案が「女系容認」となるのだ。


元ネタエントリもそうなんだが、多分「男系維持派」と「女系容認派」の対立というのは「脱法派」と「法治派」の争いなんじゃないかと思う。男系維持派は何故か中途半端な法律論を持ち出すのだ。例えば、これ。

皇室典範の改正点は 

●第十五条に「第十五条の二 臣籍に入った皇族のまたはその嫡男系嫡出の男子子孫の、皇族に復するに当たっては、皇室会議の議を経るを要する」を追加する。

この改正じゃぁ5条6条のコンボによって男系維持はできないんだけど、気にして無いらしい。皇族の範囲を決めている条文を弄らないでどうするんだよw


そんなワケで(どんなワケだ)何が嫌って、「皇統を法理で語るのは正しいのか」ってタームは「ギチギチと法律的に考えると無理筋なので法律外に逃げる」という「共産党の護憲論」と似た様な臭いをかもし出している事。「男系維持論」が最初に出てきた時、私は「急進的アナーキストの策謀」を考えた位なんだから。考えすぎだったようだけど。


以下余談
最近の共産党はなんとなく国粋主義っぽくて、反対に自民党のスポンサーである財界はダメ共産主義アナーキスト集団と化してる様な気がする。「小さい政府」ってはっきり言ってアナーキストの考え方*1だし、「成果主義賃金」って根は「計画経済」と発想が同じ*2だし。一方共産党は民族の独立を謳ったりしてるしなぁ・・・。世界統一革命はどうしたw・・・あれ?コレも「ワンワールド陰謀論に似てるなぁw

*1:多分元祖共産主義者が「共産主義社会が成立した後で」成立可能としていた事を今やろうとしている

*2:非生産部門の労働価値を誰が決めているのか考えて見よう